症例紹介

右頬の粉瘤症例(62歳男性 K様)

local_offer粉瘤治療症例

62歳の男性です。

この方は3年前に右頬に小豆大のしこりを感じていました。

 

1ヶ月前から急速にしこりが増大したそうです。

当院を受診する前に3つの医療機関を受診され、フロモックスなど第三世代セフェム系抗生物質が2週間以上にわたって投与されていました。耳下腺癌を疑われ、MRI検査の後に手術目的で入院予定だったそうです。

 

右頬の皮下に鶏卵大の一部自壊した白色球状のしこりがあります(術前)。

超音波検査で内部が低エコーで後方エコーが増強、腫瘍に血管の進入はありません(超音波検査)。

 

ドップラー超音波検査では腫瘍周囲にわずかに血流があり、炎症の存在を疑います。

術前診断は粉瘤であり、局所麻酔をして切開をすると豆腐粕様の内容物がでてきました。

腫瘍の遺残がないことを確認して傷を縫合(術直後)しました。

 

術後の確定診断も粉瘤で、術後1週目に抜糸(術後1週目の抜糸前の写真)しています。抜糸後はきれいに治っています。

 

この症例はふたつの教訓がありました。

ひとつ目ですが、確かに”高齢男性の急速に増大する右頬の皮下腫瘍”という病歴は悪性腫瘍、特に耳下腺癌を想起させますが、よく聞いてみると3年前から小豆大のしこりがあったこと、見た目がくりっとした形状(肉眼的、超音波画像)は良性腫瘍の可能性が高いことを示唆します。

 

私も医師であり、医療機関の同業者なので、3つの医療機関の先生方はたぶんそんなことはいっていないんだと思いたいのですが、”癌の手術で顔を半分とるかもしれないといわれた”と患者さんは当院の外来で泣いおられました。

 

先生方は最悪の可能性を少しだけお話されたのかもしれないし、同僚からの脅かすような悪い話を聞いたかもしれないし、ネットでの検索で最悪の事態を想像するようなエピソードを目撃してしまったかもしれないけど、患者さんは病気になって心が弱っているところへ、確定診断がつかないのに癌の可能性までお話される(実際はほとんどないとお話されていると思うけど)と、記憶は最悪のことしか残りません。

 

ボタンの掛け違いによって、医師と患者さんの関係がおかしくなりました。

あくまで患者さんからの伝聞なので、真実はわかりませんが、60代の男性が不安で泣いていたことは事実です。他山の石にしたいと思います。

 

ふたつ目は抗生物質の使い方です。

フロモックス、メイアクト、トミロン、セフゾンなどのセフェム系抗生物質の中でも第三世代というグループにはいる飲み薬の抗生物質があります。

 

これらはブロードスペクトラム、つまりバイキンならほとんどこれで退治できますよっていうのが売りな抗生物質ですが、そのためか日本では莫大な消費量があります。

 

皮膚感染症である伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん、いわゆるトビヒ)、蜂窩織炎(ほうかしきえん)、丹毒(たんどく)でも第三世代セフェム系抗生物質が多用されています。

しかし、これらの感染症は原因菌のほとんどがブドウ球菌や連鎖球菌などのグラム陽性球菌ですので、大風呂敷を広げなくてもそこだけ狙い撃ちをする治療で充分です。

しかも第三世代セフェムは低バイオアベイラビリティ、つまり腸管からの薬の吸収が極めて悪く(25%前後しか吸収されない)、保険診療で使える1日3錠では充分な有効血中濃度に到達しません。

ブロードスペクトラムなのは試験管の中での話であって、人体では別問題です。

しかもこれらの抗生物質を長期間内服すると、大腸菌を無意味に殺してディフィシル菌という悪いバイキンが大腸内に増えて偽膜性腸炎という状態になってしまいます。なんでそんな抗生物質が日本で多用されているのかって話ですが。

 

ここからは私の推測ですが、日本の医療は医局による縦割り社会であって、先輩からこうやれといわれたことを何の批判もないまま自分で調べることなく伝統を継承するかの如くやっている、製薬会社から”どんなバイキンにも効く○○をぜひ患者さんにお役立てください!”というプロモーションにころっと騙されるお人よしの医師が多い、などがあると思われます(っと2016年5月の時点でこの文章を書いたのですが、神戸大学の岩田健太郎先生が2012年3月に”構造と診断 ゼロからの診断学”ですでにこのことを指摘していました....)。

 

抗生物質の使い方は、神戸大学の岩田健太郎先生が執筆された書物が参考になりました(99.9%が誤用の抗生物質 光文社新書、プライマリケア医のための抗菌薬マスター講座 南江堂)。

 

”99.9%が誤用の抗生物質”は一般読者向けの本ですが、医療関係者にとっても参考になります。

2011年にこれらの本に出会い、私は抗生物質の使い方を根本から変えるようになりました。

出会う以前は何の批判もないままセフゾンを使っていたので、偉そうにはいえませんが。

興味がある方は参考にしてください。

ちなみに岩田先生と私は利益相反はなく、面識もありません。

 

術前 超音波検査1 超音波検査2 手術直後 粉瘤手術1週間

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